64: 綿毛














眠れない夜がくる。
眠れないまま朝がくる。
君と出会って、また一日が始まり
一日が、終わる。





「寒い」

「ん?」

「寒いー寒いー寒」

「はいはい」





君に触れる。
君が触れる。
その行為にこんなに気を遣うようになったのは
いつからだったろう。

生まれたばかりの命に触るみたいにそっと、
できるだけ傷を付けないようにふっと、
優しく触れ始めたのは

きっと君を目で追うようになってから。





「…こっちに、おいで」

「……嫌だよ、動いたら熱が逃げるじゃーん」

「じゃあ抱き締めてやらない」

「えっ!……………じゃあ、動いてもいい」

「はじめから素直になれよ」





笑っていると、絹擦れの音がした。
するとすぐそこで温かい体温がくすぶる。
その優しい香りを両腕でぎゅっと閉じ込めたら
胸に甘い痛みが広がった。




なぁ慈郎
今では僕らがこんなにそばで
笑いあっているなんて
誰が予想できただろうね






「……もう、寝る」

「こら、ベッド行け」

「ぐーぐーぐーぐー」

「狸寝入りしてんな」







思い出す

躊躇いがちに触れていたあの頃

きっとあの時に

誰とも知らず

誰とも判らず

僕らはきっと

恋に落ちたのだろうね。








終


2007.10.02.





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