鳥を追い掛けて砂浜を本気で駆け抜ける。
そのまま海に飛込んでみよう。
踵から、お尻、背中、頭、徐々に水の餌食に。
でも楽しい、この染まる感じ。
ああ、病み付きさ。
「海に飛込んだら、真っ青になっちゃった」
「あ?」
「で、夕日に飛込んだら真っ赤になるんだ」
「誰が」
「フリーク青年」
「誰」
「みっちゃんが昔読んでた絵本の主人公」
跡部がハァ、て溜め息をついた。
馬鹿馬鹿しいって顔が相変わらず似合う。
その綺麗な顔になら罵倒をされてもいいかも、
という思いを腹まで押し込み、跡部の話に耳を傾ける。
「海に飛込んだら溺死、夕日に飛込んだら焼死だ」
「跡部跡部、絵本だから」
「現実を見せないとダメだ」
「夢がねぇよ、読んだ子供8割泣くよ」
「2割は?」
「そっちの道に目覚める」
「そりゃ困る」
跡部はボンボンなのに、魚が切身で海を泳いでいるとは思ってなかった。
人は死んでも生き返れると信じてはいなかった。
跡部は現実を知っているボンボンだ。
「…でも海は気持よさそうだな」
「でしょ」
「海に飛込みたくなったか?」
「跡部に飛込むからいいや」
「じゃあ青にならねぇじゃん」
「なんで?」
「ラブラブだから赤になるんだよ」
「……跡部、今日熱あるね?」
「ハハハハッ、照れんなよ」
海に飛込んだら真っ青に
夕日に飛込んだら真っ赤に
フリーク青年は染まる。
俺は跡部に飛込んで真っ赤に染まるそうです。
うん、なんだかそれもいいかもしれない。
跡部色にも染まりたいけど、
二人で色を作るのもまた一興。
神秘を感じるこの感覚。
ああ、まるで病み付きさ。
終
2007.09.23.
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