63: 群青












鳥を追い掛けて砂浜を本気で駆け抜ける。
そのまま海に飛込んでみよう。

踵から、お尻、背中、頭、徐々に水の餌食に。

でも楽しい、この染まる感じ。
ああ、病み付きさ。







「海に飛込んだら、真っ青になっちゃった」

「あ?」

「で、夕日に飛込んだら真っ赤になるんだ」

「誰が」

「フリーク青年」

「誰」

「みっちゃんが昔読んでた絵本の主人公」





跡部がハァ、て溜め息をついた。
馬鹿馬鹿しいって顔が相変わらず似合う。
その綺麗な顔になら罵倒をされてもいいかも、
という思いを腹まで押し込み、跡部の話に耳を傾ける。





「海に飛込んだら溺死、夕日に飛込んだら焼死だ」

「跡部跡部、絵本だから」

「現実を見せないとダメだ」

「夢がねぇよ、読んだ子供8割泣くよ」

「2割は?」

「そっちの道に目覚める」

「そりゃ困る」





跡部はボンボンなのに、魚が切身で海を泳いでいるとは思ってなかった。
人は死んでも生き返れると信じてはいなかった。
跡部は現実を知っているボンボンだ。





「…でも海は気持よさそうだな」

「でしょ」

「海に飛込みたくなったか?」

「跡部に飛込むからいいや」

「じゃあ青にならねぇじゃん」

「なんで?」

「ラブラブだから赤になるんだよ」

「……跡部、今日熱あるね?」

「ハハハハッ、照れんなよ」





海に飛込んだら真っ青に
夕日に飛込んだら真っ赤に
フリーク青年は染まる。



俺は跡部に飛込んで真っ赤に染まるそうです。
うん、なんだかそれもいいかもしれない。

跡部色にも染まりたいけど、
二人で色を作るのもまた一興。
神秘を感じるこの感覚。




ああ、まるで病み付きさ。








終


2007.09.23.





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