背後から徐々に徐々に、近付いてくる時間。
あと数時間で今日が終わる。
なのに夜空はやたら明るくて曇さへ見える。
満月だろうか、優しい月光を浴びてそっと君は目を閉じた。
「ふあああああ、」
隣で聞こえる大きなあくびがまるで夢みたい。
君が優しい表情で笑う。
穏やかで、温かくて、
あまりに幸せすぎて、理解が追い付かない。
頭の悪い獣のようにただ生きることに精一杯だった。
恋人達が囁きながら歩く道も、
沢山の感情を求めて集まる学校も、
何もかもがゴミの山。
歩くのは肉塊、聳え建つのは公害、
なんて生きにくいのか、
そう思っていた。
でもその中でも君は笑う。
優しい笑顔で笑う。
美味しいから、食べてみなさい。
と、現実を少しずつ浸透させる。
よく噛んで、咀嚼して吟味しなさい、見えてくるから。
そうやっていつも君は笑い、見せてくれるんだ。
「ジロー」
「うん?」
「構ってやろうか?」
「いいよ、跡部眠そうだC」
貴重な表情が見れたから、今日はもう満足。
そんなに一気に沢山楽しんだら後々つまらないから。
今日はもう十分。
「さ、俺も跡部の大欠伸を忘れないうちに寝よっ」
「忘れりゃいいよ」
「忘れませーん」
焼き付けて眠りたいから。
そっとライトオフ。
カーテンが微かに揺れ、遮光した。
終
2007.09.23.
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