46: 彼の人の心臓















例えば私が心臓移植をしたとして
どこかの誰かの心臓を胸に宿したとする。

すると体は「これは私自身の心臓ではない」と拒否反応を起こして暴れ狂うだろう。



そしてそのまま私は死んでゆく。

流れを止めることは不可能なのです。










「慈郎」

「ん?」










反応はとても苦しく痛みを伴い、この世のものとは思えないような業火に焼かれる事でしょう。




死が必要とされる時に、必要とされる死に方をするのでしょう。










「お前が好きだ」

「うん、」

「お前は俺の空気だ、水だ、太陽だ」

「…うん」

「お前がいないと俺は、おそらく生きていけない」










けれど、同じ死ぬなら最後は愛しい君と。

同じ拒否反応を起こすなら、どうか愛しい彼の心臓を。










「俺の体温も、目も、手も、命も、全てお前のものだ」

「もらえるの?」

「ああ、煮るなり食うなり好きにしな」

「じゃあ、」










君の心臓を胸に埋め込み、体は苦しみながらも心は溢れる程の安心感を感じとる。


死ぬまで幸福を、愛を。










「俺に好きだと、もう一度」










死ぬまでの愛を、君を。










「慈郎が望むのなら飽きるぐらい、いくらでも」










好きだ

好きだ

好きだ






















そんな夢を起きたまま見るぐらい

私たちは平和な日々を過ごしているのです。










「移植とか、俺以外のやつのなんて許さなーい」

「でもお前以外じゃないと、お前とは移植後もう話せないんだよ」

「あっ本当だ」

「な」

「じゃあちゅうもできねー」

「セックスもできねぇな」

「本当だ」










暇な子供が考えることですもの、
普通に考えたら碌な話ではない筈です。

でも、何処にも行けず逃げ場のない私達二人には
こんな形ででも愛を深める方法なら喜んでするのです。



だってそうでしょう、
何より考えるだけならタダなのですから。















終


2007.04.19.





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