39: 夢の中へ
















「ちょ、」

「なぁにやってんのジロー」

「くすぐってぇよー」

「んー?」

「だーかーらー、くすぐっとぇー」

「ぶはっ、とぇーって、何語だよ」








『今日暇?一緒に遊ぶべ』


て書かれたメールが宍戸から来た。


『ごめん用事あるから無理』


て送ったらまた宍戸から返事がきた。


『そうか。何おまえどっか行くん?』


他に当たらずに何度も俺にメールを返すんだから相当暇なんだな、て悟った。
きっと俺以外の奴にはもうフラれた後に違いない。


『いや、家で昼寝』

『それ用事じゃねぇじゃん』

『俺には大事な用事(笑)』

『俺が暇してんのに…死ね!(笑)』

『o(^-^)o』

『なんでo(^-^)oだけ送んだよ!つかどういう意味か判んねぇし!(笑)』




それからは意味のない軽い文章のやりとりを。
全く会話にはならず、文章だけが宙を舞う。



そうしてたら横からいきなり携帯を取り上げられた。
長い長い指が画面には触れないように携帯を俺の手から奪う。





「ちょ、」





俺がちょっと、と言うよりも早く彼の大きな体は俺の横に居座り、
俺の首元に頭を押し付けてきた。
そのさらさらした茶色の柔らかい髪が首や顔をくすぐり、とてもくすぐったい。





「なぁにやってんのジロー」

「くすぐってぇよー」

「んー?」





聞こえない振りか、判らない振りか、ただ密着していたいからか。
頭を首に押し付けながら彼は疑問符を俺にパスする。

普段からは考えようもない甘えっぷりに、甘やかしすぎたかなぁと思いながら、
彼の望み通りもう一度言ってやる。
勿論、わざわざゆっくりと言うのがコツだ。





「だーかーらー、くすぐっとぇー」

「ぶはっ、とぇーって、何語だよ」





勿論笑いをとることも忘れない。
君と過ごすのに、笑顔は必要不可欠だ。





「なぁ、メール、やめろよ」

「でもぉー」

「やめろ」

「ふぁーい」





ごめんよ宍戸。
俺は君の脳内ではメールしながら寝てしまった、て事でよろしく。

仕方ないじゃない、甘えん坊で独占欲の強い彼が相手じゃ、君に勝ち目はない。





「メール、ちゃんとやめた?」

「やめたやめた」

「よろしい」

「ふぁー」

「俺といるんだ、二人の時間を満喫しろよ」

「そうします」







では、そのまま夢の中へ。






終


2007.02.23.





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