38: VOICE















君に思いを伝えるのに
どんな声で伝えたらいいのだろう。





























好きな奴に好きだと伝える声
好き合ってる奴に好きだと伝える声



どちらも似ていて、でも違う声色で愛を奏でる。





なぁ、どんな声で言ったら君の心に俺の愛が残る?









「慈郎」

「ん?」

「伝わってるか?」

「何が?」

「…いや、何でもない」

「?」










声は届く
手も届く
表情も届く
雰囲気も届く


ただ、心はうまく届かない。








(ああまただ)








伝えても伝えても不安になる。
それと同時にもう一度言いたくなる。







(好きだ)







たった3文字の言葉に、沢山の意味が詰め込まれている。
いっぱいいっぱいで溢れながらもプレゼントすると、慈郎は決まってくしゃくしゃに笑った。














「慈郎」

「…」

「慈郎」

「はい」

「…好きだ」

「…」

「好きだよ」

「…ふはっ」











慈郎は決まってくしゃくしゃに笑う。
























冷たい風が体を撫でた。
























ふと考える、忍ばせる

俺は慈郎のこの笑顔で
とても優越感を感じたのだ。




慈郎がこんな風に笑うのは俺といる時だけだと
他の誰でもない俺の言葉で、泣きそうな程幸せそうに慈郎が笑うのだと




何物にも代えがたい、魅惑の優越感を抱いていたのだ。













これは誰にも言えないちょっとした自慢で優越感。

自己満足の海の中で少しだけ溺れさせて?













「アトベ」

「何?」

「…好きって、すっげーな」

「どうした?急に」

「たった2文字なのに、涙が出そうになるんだ」

「…そうか」

「うん」

「…」

「アトベが俺を好きになってくれて、よかった」













優しい声で笑う慈郎
幸せな顔で笑う慈郎







愛しい君へ
愛する君へ







(俺の愛は残せてる?)










君がくしゃくしゃに笑った。










(好きだよ)





















ああまたもう一度
愛で溢れた言葉を伝えたくなるよ。




泣きそうな程幸せそうに笑う愛しい君へ

心からの愛の言葉を















この声で。











終


2007.02.01.





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