37: 君と俺とケツマフラー





















それの使用方法。

1、防寒具
2、恋人同士のラブラブアイテム
3、殺人のための道具
4、お腹を温めたり、膝にかけたり



今の使い方は5を飛んで6番目の、座布団。

















「お前、マフラーの使い方間違ってねぇか?」

「個人の好きなように使って何が悪い」

「いや悪くはねぇけど」










普通人がプレゼントしたもんケツに敷くか、と跡部がぼやいたのが聞こえた。
いやいや、君の言いたいことは判る。

本来マフラーは首に巻いて体を暖めるための道具。
首にある集まった太い血管を流れる血を外から暖め、体全体に巡回させることによって体温をあげる。
脇の下、股関節にも太い血管が集中しているため、それらを暖めるのもかなりの効果がある。
確かそうだったはずだ。
嘘、本当はあんまり覚えてない。



でも、適当でもそれは知っている。
アホの子の俺だって知っている。

でも今は寒いより何よりケツが冷たいんだ。










「だぁーって寒くて寒くてやってらんねーんだもん」

「だからって…プレゼントした本人の前ではするなよ」

「すまん」

「…」








跡部が溜め息をついたのが聞こえた。
ぼやいた次は溜め息かぁ、とほんのり思う。
まぁぼやきたい気持ちも溜め息をつきたい気持ちも判る。

恋人にプレゼントしたものが目の前で予想外の用途で使用されていたらそれはかなり落ち込むだろう。
俺ならやっぱり落ち込むと思うし。








「そんな寒ぃならこっち来いよ」

「あら何、ナニするの?」

「残念だがお前が望んでることとは違う」

「そりゃ残念だ」

「じゃなくて、こうすんの」









暖かい感覚が、柔らかい感覚が体を包む。
いや実際は固いのだけど、雰囲気的にはやんわりとふんわりと。








「…雰囲気と実際は大きく違うもんだなぁ」

「何言ってんだ?」

「胸板がごつい、固い」

「胸板が柔らかかったら胸板とは言わねぇ」

「違いない」














笑ったのはお互い照れ隠しからだったりして。















「帰るぞ」

「おぅ」








さっきまでケツの下に敷かれていたマフラーを取りに数歩戻る。
まだ温もりの残るそれを首にふわり。
わぁこうするとケツの体温すら首を暖めてくれるんだと初めて知った。

















校門を出て小さな小石を蹴る。
歩きながら白い息を吐き出す。
息が空気に流れて空に消える。
ふっと隣の体温が笑う。


ああ何やらムズムズする今日という日。














「慈郎」

「はい」

「一年祝い、する?」

「ぶはっ」

「極上ケーキを用意してやってもいい」

「…じゃあ祝おうかな」










跡部からもらったマフラーを、さっきまでケツの下敷だったマフラーを、首に巻いて跡部の家へ直行。

一年お祝いのプレゼントなんて、俺は何も用意してないんだけど。








「プレゼント、ないよ」

「いいよ」

「プレゼントは君!とか?」

「そばにいたらいい」

「…ふぁい」
















なんだ舞い上がって、バカな俺。
















(一年前の俺に言いたい)










寒いのに体と心はあったけぇ。









(お前が告白した相手と一年も続いてるぞ)



















なんだ舞い上がって、幸せな俺。















終


2007.01.30.





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