21: いつか偶然でもそれが起こりそうな場所で













あ、痛い。


これ、結構痛い。

























「うぷぷぷ」

「…なんだ?変な声出して」

「あぁ、あまりの暑さに溶けていました」








太陽が攻撃的に肌を焼くレーザーを出し続ける夏

毎日続く怒っているみたいな太陽の日差し。

光線は痛いほどなのに、
空気はでもまだ少し、湿気をおびて粘着性を持っていた。








「部活、大変」

「そうだな」

「暑いし辛いし、痛いんだ」

「痛い?」








そうそう、痛いんだ。


ちくりちくりジワジワと

地味に焼き付くしていくのさ。





でも、きっと君には判らない。








「うん、ちくちく痛いの」

「日焼けか?」

「どうかな……でも、きっと、そう」

「気を付けないと」

「うん」

「ジローは白いから、焼けたらすぐ判るね」

「そうかな?」








キラキラ眩しい太陽がお空に一つ。

あ、待って待って、地上にも一つ。



それが君。





君が俺の頭を二度、いや、三度撫でた。


これが幸せ。








「部長、ちょっといいですか?」

「あぁ」








君が部員に呼ばれた。
君が俺を離れていく。


これが、不幸せ。



そして、いわゆる「日焼け」の原因。





君によって高まった俺の熱さが
君によってジリジリと俺を焼く

焼く

妬く。








「ジロー」

「ん?」

「じゃあ、練習頑張ろうな」

「…うん、じゃあ」

「あぁ」








俺は君に夢中になって
どんどん君の熱さに焼かれていくんだ。
ヒリヒリしてじりじりして、静かに侵食、炎症。

ひとりよがりの愛の悪循環。




でもきっと君は気付かないからさ。








「今日も太陽はカンカンだ」





太陽は小さな俺をまだ知らない。





「さてさて、君はいつ気付くかな」





いつか太陽が小さな頼りない俺を見つめてくれるまで
ずうっとずうっと待ち続けるよ。





「すぐそこで」





いつか偶然でもそれが起こりそうな場所で。














(あぁ、痛い)











いつか偶然でもそれが起こりそうな場所で。













終


2006.08.09.





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