20: 指先のストーリー















「あ、まつげ」








親指が頬を滑る。

君のシャープなラインを優しくなぞる。



君の視線が俺を見つめ、
俺の視線は一直線に君の滑らかな頬へ。



君の適度な体温と優しい香りに、指先にまで熱が集まる。

体温が高く熱く燃え、クラリ、軽いめまい。





(……綺麗な顔…)





この指先から伝わればいいのにね


俺を悩ませるこの気持ちが。








「ジロー、くすぐったいよ」

「ふふ、ごめん」








空気が肌を撫でるよりも優しく君に触れたい。


だって俺は君に、ほんの少しの傷もつけたくないからさ。








「…とれたか?」

「うん」








まつげは数度指を滑らすとするりと頬から離れ落ちた。


それと同時に俺の手も跡部の頬から滑り落ちた。


後に残るのは切ないまでに上がった体温だけ。

その熱は風が体を駆け抜けてもまだおさまることを知らない。







「……、…」

「ん?」

「…やっぱり……まだ、とれてない…」

「…じゃあ、お願いしてもいいかな?」

「うん」








君の頬にもう一度この頼りない指を。





だってだって、まだ少し

あと少し





君に触れていたい。








今度は君の顔を見つめて

表情一つ一つを確認。


全ての感情を読み取るように

どんな動きも見逃さない。







あと少し

あと少し








「…」







頬のカーブに沿って、俺の指は薄い君の唇へ

二回撫でて、少し背伸び。



準備はOK

ゆっくりと君の唇を舐めた。



君は一瞬驚いて、

でも笑って俺の唇にくちづけた。













どこであれ、俺は君の幸福を願っているからさ。















終


2006.08.09.





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