18: 百獣の王
















大きくて少し強いまっすぐな瞳


それがくるくる変わる毎に

心が奪われる






愛しい君は

優しすぎるライオンの子。





















「……」





一点集中。

睨むように一点を見つめるジローの目は大きい。

光のあたり具合いから、輝くその目は獲物を狙うライオンのよう。


眼光鋭く見つめるその先には。





「見るな」

「…あとべ」





ジローの目を覆うと、人より少し高い体温が揺らいだ。


ジローの、きつくきつく握り締めている手をゆっくりとほどいて握る。


ジローの掌にうっすらと水分を感じ、血ではないならいいなと願った。





「見ちゃ、駄目だ」

「…うん」




人が避けるようにして歩く道端

照り付ける太陽は全てを焦がす。

その熱すぎる太陽に照らされて
もう死ぬのを待つだけの命が一つ。




小さな小さな仔猫。





うっとおしい程に、虫が回りを行き交い

仔猫の体にとまっては、また飛ぶ。



人工的な自然の摂理
悪夢のような現実



産まれたばかりの



死。





「かわいそう、て思ったら駄目だぞ」

「判ってる」





ジローはそう返事をすると、少しだけ強く俺の手を握った。


俺はその声にならない悲痛な叫びに、力一杯手を握り返すことしか出来なかった。





「…ジロォ」

「…」





ジローの視線は今だ消え失せる寸前の命へ。







眼光がキラリと揺らいだ




ジロー


ジロー、泣かないで。


泣かないでジロー。
























強い意思と目を持つライオン。



そのライオンは狩る側でありながら
とても優しい心を持つ百獣の王。



今日もライオンは金色のたてがみを風になびかせ

ゆっくりと穏和に生活する。









(ジローもあの猫も、産まれてくる場所を間違えたんだな)






君の痛いほどの優しさが

空に散った。















終


2006.06.07.





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