17: 世界に愛されて



















柔らかな風がふわりと

俺の隣の金色を揺らす。



優しい空気が空に舞い

暖かい体温に安心した。



生きている幸せをここに誓う



君は太陽に愛された子供だね。











「まだ終わらないのか?」

「もう少し待って」

「それもう5回目」

「これで最後だから」





降り注ぐ太陽の日差し

その恩恵にさらされて育った小さな花を、ジローは摘んでいた。



それは清楚で可憐で、儚い花。



(ジローみたいだ)



小さく丸くなる背中を今すぐ抱き締めたい衝動に駆られた。



「……」



俺は、自分が座っていた椅子からそっと腰をあげる。

一人掛けソファの軋む音が小さく響くが、ジローはそれには気付いていないみたいだ。



俺の心に子供みたいな小さないたずら心が宿る。



靴下のまま静かにテラスから地面に足を下ろしてみると
小さな草が靴下ごしに少しくすぐったい。

けど立ち止まらず、そのままもう一歩。


足音を忍ばせて、静かに静かに

愛しいその小さな背中に近寄り






「ジロー」

「ゎっ、」

「いつまで待たせるんだ?」

「、びっくりした、いきなり抱き締めないでよ、」






そう言って腕の中で身じろぐジローの体は細かった。

普通の男子中学生はもう少しがっしりしているが、骨が細いのか
ジローの体は中々細い。


俺は小さく溜め息をついて、ジローに訪ねた。






「なぁ、君はちゃんと食べているのかね」

「ははっ、あとべ何それ、社長さんみたい!」

「いいから答えなさい」

「食べてますよ、若社長」





面白そうに笑うジローがとても愛しい。





「本当かね」

「本当です」

「誓える?」

「うん」

「じゃあ誓いのキスを」

「…今日のあとべは少し変だね」






頬を染めて笑うジローの唇を親指で撫でる

するとジローの長い睫がふわりと重なった。








「ジロー、」

「はい」

「好きだよ」







柔らかく小さな唇をそっと塞ぐと
ジローはとても大人しくなった。























「結局、何をしてたんだ?」

「花の首飾りを作ってたのさ」



ベッドで枕に顔を埋めていたから体を起こしてあげる。

窒息はしないと思うけど、どんな危険要因も排除したい。

ジローはいやいやしながらも最後には諦めて
俺の首に腕を回してバランスをとって起き上がった。







今はまだ軽いこの体もいつか
もっと鍛えて、軽々と抱えることが出来なくなる日が来るのだろうか。










「首飾り、ていうか、王冠?」

「へぇ」

「跡部にあげようと思って」

「そうか…、邪魔しなきゃよかった」






そう言うとジローは小さく声をもらして笑ってから言った。






「いいよ、また作る」






優しい笑顔に

ここに生きている幸運に感謝する。






「じゃあその時は俺も一緒に作るよ」

「いいね、それ」

「作り方教えてな」

「うん」











太陽がジローのためにキラキラ笑うよ

柔らかい風が幸せそうに踊るよ



君の温かい体温が腕の中にすっぽりと収まり

君の優しく生きる心音に
俺の心はくすぐったそうに笑うんだ。




君は世界に愛された子供だね










「ジロー」

「…」

「…もう寝たのか?」

「…うん」

「おきてるじゃないか」

「へへへ」











君の幸せよ



永遠であれ。












終


2006.05.29.





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