16: 日和








朝目が覚めるととても眩しくて

キラキラした光を見たよ。








「…あとべ…?」

「あぁ、ごめん、起こしたか?」

「ん…平気……」



目が覚めても脳はまだ少し起動するのに時間がかかる。

いつまで経っても、寝起きのこの気だるさというやつは気に入らない。



「………」



重く感じる頭を持ち上げ辺りをくるりと見回すと、
そこは広くて清潔感漂う部屋が広がっていた。



部屋の隅の小さなフロアライト
天井を飾るクリスタルシャンデリア
アンティークのガラスキャビネットに
大きな大きなベッド
四角いガラステーブルと柔らかいソファ。

それらに、跡部によって一つだけ開けられた窓から差し込む光があたって
とても爽やかな朝が創造されている



跡部の部屋。

オレがこの世で二番目に好きな場所。



「……ふぁ」



開け放たれた窓の前に立つ跡部はとても綺麗。

光があたって金色に見える髪を爽やかな風が揺らす

白い肌を少しずつ焼く紫外線がとても憎らしいよ。


骨っぽい大きな手が窓枠に置かれるのを見ながら、小さくあくびを一つした。



(…あ、)



跡部知ってる?
もしかしてまだ起きたばかりで鏡を見てないのかな?
あのね、格好いい仕草に不似合いのね、寝癖がついてるんだよ。


ああ、とても愛しいね。



「ジロー、見て」

「?」



跡部の低くて優しく響く声がオレを呼ぶ。

風が跡部の匂いをオレまで運んでくれた。


跡部は体を右にずらして、窓の外を見るように促す。

オレはその長い指に導かれるように外に視線を移した。


そこには雲一つない


青





「いい天気だろ?」

「…」

「三日ぶりの晴天だな」

「…うん」

「ジロー」

「はい」

「今日、出かけようか」

「奇遇だね、オレもそう思った」



視界に広がった空は、
数日間降り続けた雨が嘘だったみたいに
綺麗な青い絵の具をどこからか絶え間なく溢し続ける。

白いふわふわはどこか遠くに遊びに行ったのかな。

太陽は職場復帰。
数日間の有給休暇は楽しめた?


いい天気だね

デート日和だ。



「じゃあ、おしゃれする」

「うん」

「あとべもだよ」

「判ってる」



ねぇ、どこに行く?

オレはどこでもいいよ。



「じゃあ、着替えたら駅に集合」

「了解であります」

「可愛くしておいで」

「あとべもね」

「俺は格好よくなって行くよ」



わざわざ駅に集合なんて、素敵。

流石は跡部。





久々に晴れた日曜の朝。

おしゃれをして大好きな人とおでかけ。



「あ、」

「ん?」

「あとべおはよう、大好きだよ」

「おはよう、俺も大好きだよ」


流石は跡部。





さぁ、幸せな一日が始まる。









終


2006.05.23.





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