「アトベ」
ジローのいつもの無表情に添えられた、西から差し込んでくる暖かそうなオレンジ色の光。
金色の頭が暖かい色と混じり、俺の好きな優しい色に染まる。
その色は俺に、どこぞのお調子者を思い出させた。
「あ」
「? 何?」
「違う人の事考えてる」
「、何で判るんだ?」
血色の悪い冷たそうな顔に小さな不平の色が作られた。
ジローは二週間前逢った時よりも、痩せたように見える。
「目、見てたら判るもん」
西日のおかげでようやく色味があるように見える肌は、蛍光灯の下ではさぞ青白いのだろう。
ジローをここまでさせたのは俺だ。
「ごめんな」
「何が?」
「最近、ちゃんと飯食えてないんだろ?」
問うと、うん、と素直に頷く。
細かった首がよけい細くなっていて、頼りなさげに頭部を支えている。
忙しくても、時間を作って逢いに行けばよかった、と今更な後悔はいつものこと。
「二週もほったらかしでごめん」
「うん」
「これからはご飯、しっかり食べような」
「アトベは?」
「俺も一緒に」
ジローはまた小さい声で、うん、と言って頷いた。
もう少し待ってろ
すぐ仕事を片づけて帰る仕度をするから
そうだ、帰りにレストランに寄ろうか
ジローが好きな花丸ハンバーグがおいてある、あのレストランに
「アトベ」
「何?」
「ありがとう、ごめんなさい」
謝罪するのは俺なのに
感謝するのは俺なのに
「おいで、ジロー」
いっぱいの愛情を込めて君の頭を撫でよう
それをされるのが君は好きだろう?
二週間逢わないと言うことは
二週間ご飯を食べないのと同じこと。
俺たち子供は
愛情すら食して生きていく生き物だから。
「うん」
これから先は
君を空腹にはさせないよ
壊れるほどに
俺で満たしてあげる。
愛しのジロー
終
2006.04.08.
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