06: 西日





君がいないと溺れてしまう。

この広い部屋で俺は溺れてしまう。


この家はこの部屋よりも格段に大きいし、ましてや世界なんて俺が存在している事すら知らないみたいに
悠然と火山活動をしているくらいに大きい。


なのに俺は一人人知れず溺れている。


ああ、こんなにも小さな部屋でこんなにも小さな俺は、君がいないだけで溺れてしまうんだよ。

カーテンは開かれたまま
床には本が点々と散乱していて
飲み終えたペットボトル
隙間の開いた本棚と
消しカスの乗った机
シャーペンやマーカーペンや定規の刺さったペン立てや
いつのものか判らない脱いだ靴下


全て君がいなくなった時のまま。


生きる事に精一杯だった俺は、ヒトです。


ヒトは、何故亡くしてからではないとそれが大事なものなのだったと気付けないのだろう。


俺は今日も西日の射し込むこの時間に、
あの時の服であの場所に同じように寝ころんで君が帰ってくるのを待っています。


溺れても、必死にその小さな四肢でもがきながら。




ああ、愛しい君よ。







終



2005.12.24.





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