いつも人形のような瞳をしていた。
「ジロー、お前なんか興味あるもんってねぇの?」
「何で」
「いや、いっつもつまんなそーだからよ」
俺は美しいものが好きだ。
「そうだなぁ………あっ、コウモリの」
「却下」
「……………」
海とか、空とか、惑星とか。
広大で雄大で、そして美しい。
「…じゃあ……あっ、ミミズの」
「却下」
「……………」
俺はそれらを手に入れたくて、そしてこの世で一番手に入れてはいけないものだと思っていた。
「…カエルの声嚢とか」
「死なすぞ」
「何でだよ」
何故なら俺には大きすぎるから。
「他にねぇのかよ、もっとマシなもん」
「ん〜……別に…」
「ハ? マジかよ?」
「大マジ」
そんな大きな虚無感を抱いていた俺の前に現れたのがコイツだ。
海とか空とか惑星とか、そんなものに匹敵するくらい綺麗だとその時は錯覚した。
「…じゃあ、カラッポだな、お前の心」
「うん」
「何にもねぇのな」
「うん、あっ、カエルの」
「以外で」
「うん」
確かにこいつは綺麗だ。
でも、高々こんなちっぽけな人間が海に空に、惑星に勝てるはずがない。
美しさでは劣勢。
でも美しさの反面に持つ虚無感は、この世の何よりも優勢。
「……埋めてやろうか」
「何?」
「俺がお前のカラッポの心、奪ってやろうか」
「何それ」
美しさにある反面の悲観。
俺は実は何よりもそれが好きだったのだ。
俺には海とか空とか惑星なんてでかすぎるものよりも。
「ちっぽけなお前みてぇなののが合ってんだよ」
「は?」
お前の心は。
「俺で満たしてやるよ、壊れる程な」
嗚呼、俺的革命の予感。
終
声嚢(せいのう)……カエルの頬の両脇についている鳴く時とかに膨らむあれ。
2005.10.17.
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