04: 美=悲観




いつも人形のような瞳をしていた。

「ジロー、お前なんか興味あるもんってねぇの?」
「何で」
「いや、いっつもつまんなそーだからよ」

俺は美しいものが好きだ。

「そうだなぁ………あっ、コウモリの」
「却下」
「……………」

海とか、空とか、惑星とか。

広大で雄大で、そして美しい。

「…じゃあ……あっ、ミミズの」
「却下」
「……………」

俺はそれらを手に入れたくて、そしてこの世で一番手に入れてはいけないものだと思っていた。

「…カエルの声嚢とか」
「死なすぞ」
「何でだよ」

何故なら俺には大きすぎるから。

「他にねぇのかよ、もっとマシなもん」
「ん〜……別に…」
「ハ? マジかよ?」
「大マジ」

そんな大きな虚無感を抱いていた俺の前に現れたのがコイツだ。

海とか空とか惑星とか、そんなものに匹敵するくらい綺麗だとその時は錯覚した。

「…じゃあ、カラッポだな、お前の心」
「うん」
「何にもねぇのな」
「うん、あっ、カエルの」
「以外で」
「うん」

確かにこいつは綺麗だ。
でも、高々こんなちっぽけな人間が海に空に、惑星に勝てるはずがない。

美しさでは劣勢。

でも美しさの反面に持つ虚無感は、この世の何よりも優勢。

「……埋めてやろうか」
「何?」
「俺がお前のカラッポの心、奪ってやろうか」
「何それ」

美しさにある反面の悲観。

俺は実は何よりもそれが好きだったのだ。

俺には海とか空とか惑星なんてでかすぎるものよりも。

「ちっぽけなお前みてぇなののが合ってんだよ」
「は?」

お前の心は。

「俺で満たしてやるよ、壊れる程な」

嗚呼、俺的革命の予感。




終





声嚢(せいのう)……カエルの頬の両脇についている鳴く時とかに膨らむあれ。


2005.10.17.



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