02: 続・ド変態Logic



















奴と変態的出会いをしてからほんの数週間。
奴がE組と言っていたから、俺はできるだけE組の近くへ行かないよう尽力した。
なのに俺はその努力を自分で裏切ることとなる。
そう、自分の好奇心を恨む出会い方で、再びあの小ヤンキーと出会ったのだ。


















   続・ド変態Logic
























(あの先輩のフォーム、綺麗だな)



目の前でレギュラーの先輩がコートで試合をしている。
学年はおそらく3年生だ。
彼が打ったボールは、綺麗なストロークを描きライン際へと着地する。





(あの先輩は球筋が鋭い)





その横ではまた違う先輩が試合をしている。
鋭利な角度でコート上に傷跡を残していく球速は圧巻だ。

他のコートにも似たような強者がゴロゴロといる。
どの先輩のプレーも見ていてとても気持ちのいいプレーだった。

目を惹く惚れ惚れするプレーと共に、更に上を目指す向上心がありありと見てとれる。





(目標が身近に何人も出来た)





俺は嬉しく思った。

しかし、自分はまだ1年。
コートに入れるのは特例がない限りは最低でも2年に上がってからと決まっていた。
1年の間はコートの隅で先輩の練習を見たり、球拾い素振り筋トレをするなどの基礎トレーニングしかできない。
故にまだ先輩と打ち合うことも出来ないし、コートに入ることすら許されないのだ。
俺はレギュラー用の、綺麗に完全に整備されたコートで先輩たちと試合をしてみたかった。





(…もう少しの我慢だ)





首を軽く左右に振ると、ふぅ、と一つ溜め息を吐いて立ち上がった。
そろそろ球拾いと素振りをしなくてはいけない。


胸にくすぶる気持ちを覚えながら、思いを振り切りやっと球拾いを始めた。







拾い始めてものの1分。
そこでふと、気付く。
グラウンド隅に、何やら黄色い毛玉がある。





(なんだあれ)





俺はつい興味本意でコートからこそりと抜け出し、遠くグラウンド隅目指して小走りをした。
あんなに色の鮮やかな動物はいない、きっと猫でも犬でもないだろう。
興味の泉がどんどん沸き上がり、ついに俺はそこまで辿り着いた。





(飼われてない動物だったら、連れて帰ろう)





動物ではないだろうと判っていながらも、心の片隅でどこか期待していた。
毛のフカフカした、可愛らしい動物がそこにいる事を。
俺は可愛らしい動物が好きだった。





興味に駆られ、音をたてないようそっと覗き込む。





「………………」





俺は愕然とした。
いや、失望した。
フカフカした可愛らしい動物を期待していたのだ、それは当然だった。



俺が目にしたのは、以前男子トイレで出会ったあの小ヤンキー。
奴は半目で更に白眼を向いてそこに眠っていた。





(何故こんな所に奴が…)




俺は音を立てないようにそっと後ず去る。
ここに来るまでのワクワクした気持ちとは裏腹、なんとしても奴にはバレないようにと細心の注意を払い後ず去る。

よくあるB級ドラマや漫画のように物音は絶対たてない。

そうしながらそっと下がっていたのに、奴はいきなりガバッと体を起こした。





「…メンマ」





奴の開口一番の発言「メンマ」。

その数秒後、思わず動きを止めて固まってしまった俺と奴の視線がゆっくりと交差した。

奴は再びメンマ、と小さく言って、大きな欠伸をしたのだった。








続


2007.09.01.





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