誰の前でも毅然で優雅で気高く、雄雄しく優美に君臨していなくてはいけない。
成長するにつれて周囲から寄せられる行き過ぎた期待を背に、俺は生きていた。
12年間。
その大半に孤独とプレッシャーを引き連れて。
ド変態Logic
「俺、ジロー」
「…は?」
「1年E組、出席番号2番」
「………あぁそう」
そいつはいきなり俺の横で自己紹介を始めた。
前を向いたまま、思い出を語るように淡々と綴る言葉は紛れもなく自分に向けられていて、激しく動揺した。
見た目の第一印象は、小さいヤンキー。
新手の変態だとすぐに悟った。
髪の毛は嫌に明るく金に近い茶色で、まるで自前のように綺麗に染まっていた。
薄茶の瞳と白い肌ははどこか人形じみていて、顔はいわゆる“女顔”。
華奢そうな体と、どこかガキ臭い喋り方。
なのに鋭すぎる視線は、どこか人を馬鹿にしたような目付きだった。
もうこの時点で俺は関わり会いを無くしたいと思い、急いで作業を終わらせようと腹部に力を込める。
そうこうしていると、横にいたヤンキーはいきなりこちらを向いて俺を睨むように見つめて言った。
「実はずっと気になってました。お友達になって下さい」
「………」
ここは男子トイレだった。
「あ、記念に握手して下さい」
「嫌だ」
「何故」
「ここは便所で、テメェはさっき用を足しただろうが」
「そういえば」
「いっぺん死んで来い」
「えぇっそこまで酷い事を赤の他人によく言えるね君っ」
その汚ねぇ手を俺に向けるな、と言いながらさっさと用を済ませて手を洗いその場を後にした。
トイレから出て、やっと人通りの多い少し慌しい廊下で一人思う。
(奴はまさしく変態だ。変態決定だ。)
コレが君との一番最初の思い出。
続
2007.03.18
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